主にマンション等の外装化粧材として使用されているタイルですが、その色合いや表情は各種様々です。
数多くの製造メーカーがそれぞれの特徴を生かし様々な製品を創りだしてきた事から、
補修タイルの作成においてはその商品の特徴を如何に見極めるかが重要です。
マンション等の外壁材として主に使われている『モザイクタイル』について、その製法と見極めるポイント及び注意点を下記いたします。
高圧プレスにて押し固めた素地の表面に様々な種類の釉薬を掛けて焼成したタイル釉薬の種類によって艶のあるもの(ブライト釉)艶の無いもの(マット釉薬)艶も無く表面が土のような質感のもの(泥釉)等があります。
表面に様々な種類の釉薬を塗布し、色合いや表情を変える
タイルを側面(コバ面)から見たとき表面と、側面の色差がある場合はほとんどが施釉品です。
※素地の色は以前は白っぽいものが多く使われましたが、近年はグレー色の素地が主流です。
補修タイルの場合側面にモルタルが付着しており判断が難しいこともありますが、割れている断面部分や露出しているタイルの裏側と、表側を比較することでの判断も可能です。
高圧プレスにて押し固めて焼成を行い作成するタイル。
素地の原料自体に顔料(色粉)を入れて着色しており、更にはガラス粒や疑石といった粒を原料に混ぜて、施釉品とは異なる表情を表現したもの。
基本的には何も掛かっておらず素地そのもの
タイルを側面(コバ面)から見たとき、表面と側面に色差がない場合はほとんどが無釉品です。稀にタイル表面に透明なガラスコーティングのように仕上げてあるものや、表面の釉薬と素地の色合いが近く、見極めが困難な商品もあります。
タイルの表面のみに着色する施釉方法に比べて原料自体に着色する無釉タイルは、材料のコストに非常に影響の大きい顔料(色粉)を大量に消費する事からコストが非常に高くなります。更には原料自体の生産ロットが非常に大きい為(トン単位になるため)少量の対応においても価格が非常に高くなってしまいます。その為、価格的に合わない事から無釉タイルの需要自体が激減しており、無釉タイルの生産を行える工場自体が減少しているのが実情です。
表面に釉薬を塗布し、様々な色合いや表情を表現するのは勿論のこと、高圧プレスにて押し固める際に使用する金型の表面の凹凸具合によっても、更にバリエーションは広がります。
主流はフラット面(表面が平らなもの)や石面(表面に凹凸を持たせ石のように見せたもの)ですが、他にも山型や筋面、引っかき面などその種類は数多くあります。更には、各製造メーカーがそれぞれアレンジを加えていることから、一般的に石面と呼ばれる面状でも凹凸感等は微妙に異なります。
タイルの表面に釉薬をスプレー施釉機にて塗布しますが、釉薬自体の色合いや、種類、掛け方等によって様々な表情を表現できます。
べた掛け:
シンプルな仕上がりを求める場合に行う施釉方法です。プレーン調のマット仕上げやブライト仕上げ、斑点掛品の下地塗り等に行う施釉方法です。
斑点掛け:
斑点の大きさや量、釉薬の比重調整等によって様々な表情が表現できます。
基本的には上記の2種類の手法を組み合わせて更には砂やガラス粉、疑石といったものを加えて表情に深みを与えます。
例1:下地に薄く『ベタ掛け』を施しその上に『斑点』を細かく霧状に振り掛ける手法。
例2:下地に『斑点を』掛け、その上に薄く『ベタ掛け』にて施釉を施し釉薬表面に凹凸感を表現する手法。
これらの表面仕上げ方法+金型との組み合わせによって各製造メーカーがそれぞれの特徴を生かした製品を創りだしています。メーカーによって、異なる設備や焼成条件、原料入手方法等を他メーカーが再現する際には、斑点の大きさや量、釉薬の溶け具合、様々な粒など困難な点が数多く存在します。
上記以外にも釉薬内にチタンを含ませ、様々な表情を作り出すチタン釉薬や焼成したタイルの表面に金属のような光沢を発生させるラスタータイルなど、その表現の方法は多種多様です。
各メーカーがそれぞれの趣向を凝らして製作したタイルを補修する上で最も必要なことは、その製法、手法をできる限り確実に見極めることです。
【二丁掛けタイル】227×60mm
製法 | 製造方法 | 生産量 | 価格 | 理由 |
---|---|---|---|---|
乾式施釉製法 | 顆粒粉をプレスし表面に釉薬を塗布する | 大量生産可能 | ◎ | ※顆粒子は他商品と共通の為生産ロットは少量でも問題なく対応可能 |
乾式無釉製法 | 顆粒粉自体に顔料を添加し着色した原料をプレスにて成型 | 大量生産可能 | ○ | 現場単位での原料調合となることから施釉品に比べて価格が高くなるまた原料の最小ロットの制約があり少量は割高となる |
湿式無釉製法 | 水分の多い粘土状の原料を押し出し成型にて成型する | 乾式に比べて 生産量は劣る |
△ | 原料単価自体が乾式品に比べて割高であり、プレスで圧力をかけて押しつぶさない事から強度を保つべく、厚め=原料多めとなり価格は高い |
湿式施釉製法 | 水分の多い粘土状の原料を押し出し成型にて成型した後、表面に釉薬を塗布して着色する | 乾式に比べて 生産量は劣る |
× | 原料単価自体が乾式品に比べて割高であり、プレスで圧力をかけて押しつぶさない事から強度を保つべく、厚め=原料多めとなり価格は高い更に表面に着色することから湿式無釉に比べて更に高い |
二丁掛け乾式施釉製法は当社のモザイクタイルと生産方法が共通の為、大量生産に向いており、またベースの原料が共通なので、表面の釉薬の色合いを変えるだけで様々な規模の現場に対応が可能です。ベースの原料が共通であるため原料自体のコストもかなり抑えることができます。
乾式無釉製法は顆粒子自体に色をつけるため、表面に釉薬を乗せるだけの施釉よりも顔料が多くなり価格は高くなります。製造する商品の切り替え時には他現場とベース原料が混ざってしまうことから生産開始及び生産終了後の原料切り替え分のロスが発生します。これらも価格UPの要因となります。
※原料に着色する際、原料の粉砕、混合時に顔料(色粉)を加えて行う練りこみ方式と、顆粒子状になった原料に顔料(色粉)を添加し混合して着色するドライミックス方式があり、比較的安く作りやすいドライミックス製法が現在の主流です。
湿式無釉製法は原料を製造する際に顔料(色粉)も一緒に練りこんで着色することから、顔料添加量が非常に多く原料単価がかなり高いです。また、各工場によって生産条件が微妙に異なり、それにあわせた個々の調合での原料になる為、乾式の顆粒子品に比べてかなり高くなってしまいます。
押し出し成型プレスを稼動させる最低の原料ロットが乾式に比べて非常に多く、ロスも大きいことから価格は高くなってしまいます。
湿式施釉製法は湿式無釉品のベースに更に釉薬を塗布することから手間がかかり生産効率が非常に悪くなります。
※ただし、補修における湿式施釉製法は、湿式の質感を出しつつ表面を釉薬で表現することができるので、どの物件であっても共通のベース原料を使うことができます。そのため、一般的な湿式二丁掛品に比べて比較的少量生産が可能です。
製法の違いから一日の生産量も少なく、原料単価も高いことから必然的に湿式品の価格は高くなってしまいます。二丁掛タイル自体がモザイク品に比べサイズが大きいことから必然的に設備(プレス能力等)が大型となります。 また外壁タイルの価格がどんどん安くなり少量多品種化が進んだ結果、大型設備を要しコスト的にも非常に高い二丁掛タイルの受注量も下がり、生産対応できるメーカー自体がかなり少なくなってきたのが実情です。